革新と革命

Evolution - Revolution


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革新と革命

10月18日

 

過去30年、単独で世界一周をしたセーラー達のボートは、いくつかの革新的な設計変更を受けています。まず最初は、安全上の理由のため、しかし同時により強化された艇の級(クラス)の規則に合致させるためにです。しかしながら、バンディグローブのそれぞれの大会を通して、ボートは性能を上げるための進化を続けました。最初の単独世界一周レースにおいて、優勝者、Titouan Lamazou は109日と8時間、一方で、Francois Gabart は2013年以来、78日と2時間の戦いの航海記録を保持しています。別の言葉で言えば、コース距離は20%長くなっているのにもかかわらず、25%の向上が見られるということです。

 

外洋レースはおそらくボート性能の戦いのスポーツです。それは過去30年間で最も顕著に変化しました。最初の世界一周のIMOCA60艇が設計されたのは2回目の単独寄港世界一周レースが行われた1996年のBOCチャレンジにまでさかのぼります。しかし、優勝艇が15トンもある重い、がっしりしたアルミニウム製のCredit Agricole Ⅲ号になった時から、設計者たちは推進力を増し、一方で重量を減らす方法を見つけなくてはならなくなりました。そこで、最初のバンディグローブ(1989~1990)では、船体の長さだけではなく、デザインの強制もなくなりました。しかし、各大会を経るにつれ、多くのバラストや帆などの幅広い積載が許されることに疑問が投げかけられました。特に1996年の3隻のボートが転覆し(Dinelli号,Bullimore号, Dubois号)、そして1人のセーラー(Gerry Roufs)が死亡した、悲劇のレースの後です。

 

ウイング・マストとカンティング・キール

 

制度はボートの安定性を考慮し、安全装置を強制するIMOCAクラスの規則によってより理想的になってゆく傾向があった一方で、60フィートの艇は革新を続けていました。

1996年、Yves Parlier が初めてのウイングマスト(マスト自体が流線型で動いて整流する)を付けて世界一周に出航しました。2000年には、ボートを強靭にしたカンテイングキール(艇の底につけた安定板のキールが可変動する)を付けたMichel Desjoyeaux が優勝しました。やがて、非対称のダガーボード(安定舵)、増設バラストタンク、Grib files(天気予報のサイトの名前)を使う天気予報のための多くの手順、そして積載型航路システム、破れないセール、事前にカーボン繊維が注入された船体などが現れました。

 

IMOCA艇は、2001年に100日を切るタイムを出し、2005年には90日で世界一周航海を完走し、やがて、2009年には85日を切り、2013年には78日になりました。今もって、クラスルールは制限を増やしています。今日の最大ビーム(船の幅)5.85m、最大吃水4.5m、最大高29m、最大5つの付属装備、最小乾舷高、そして操舵室防御屋根の厚さ、などです。

Fino-Conq、Owen-Clarke、Farr、Kouyoumdjian、それから、横揺れ安定性を増加させた直線と丸型船首のVPLP-Verdier(いずれも設計者または事務所)などの設計チームのリーダーシップのおかげで変更が行われてきました。

 

驚くべきフォイリング(水中翼滑走)

 

しかしながら、革新はお金がかかります。2013年にスキッパーたちは統一設計(ワン・デザイン)の艇でコストダウンを図ろうとしました。この考えは立ち消えになりましたが、IMOCA60艇を建造する明確な組み合わせの要素、マスト、キール、バラストタンクの容積の制限、が標準化されました。アメリカズ・カップのカタマラン(双胴艇)に刺激を受けて、設計者たちは船体を浮き上がらせ、ボートのスピードと推進力を増加させるフォイルを付け加えるアイディアを思い浮かびました。6隻の新しいプロトタイプがこれらの新しい付属装備を装着しました。そして1隻の旧タイプのボートも改造して仲間入りをしました。

 

しかし、2016年の規定では付属装備品の数の制限は5つです。(キール、2つの舵、そして2本のダガーボード)設計者たちは2つの機能を合わせ持つ装備を考えざるを得ませんでした。向かい風の時、艇が横に流されるのを止めるための流れ防止機能と、カンテイングキールに加えて艇を持ち上げるのに役立つリフトアップ機能です。

このフォイルの舳先が前述のことに役立つ重要な部分です。肘の部分が艇の持ち上げを助けます。そして船体から出ているシャフトが舳先を支えています。多くの海上での試験の結果、スキッパーと設計者は、フォイルの改良範囲を制限しているクラスルールを思い起こしながら、出来うる最良の調整方法を定義しました。そうして、彼らは最初に設計された形から、特に向かい風の時の帆走性能を上げるために、形を変更しました。

 

現在では、すべてのフォイルを装備ているスキッパーたちは、バージョン2(フォイルに損傷を負ったHugo Boss号を除く)を装着しています。しかし、それぞれは小さな差異を持っています。それは、向かい風でよりよく走るためや、横からの風でもっと力強く走るためや、追い風での帆走で艇を持ち上げるために、性能を向上する目的のためです。フォイルのおかげで、真の風70度から120度の間で顕著な推進力を得ます。

カンテイングキールと連動してこの付属装置は、フォイルなしの伝統的なIMOCA艇に比べて、2ノットのスピードを増加させます。

 

この最新のデザインの装置は一年間のテスト経てよりよく変わりました。しかし、今もって単独無寄港世界一周レースでの成果に疑問があります。どっちのボートが生き残るのか? フォイルで海の上を飛ぶものなのか、または、単純に軽いものなのか。2か月と半の3つの海を回るセーリングの後、誰がトップに躍り出るのでしょうか? そこでは南氷洋の嵐から赤道直下の凪まで、多くの階層の天候の状態があります。レ・サーブル・ド・オロヌで2017年の1月20日ごろ答えが出ます。

 

記事:DBo / M&M

翻訳:Watson Courtier

as of Oct.25 2016